家族連れやカップルらでにぎわう魚の市場通り。カニ汁や浜焼きなどを手に食べ歩きを楽しむ=3月上旬、長岡市寺泊下荒町
家族連れやカップルらでにぎわう魚の市場通り。カニ汁や浜焼きなどを手に食べ歩きを楽しむ=3月上旬、長岡市寺泊下荒町

 長期企画「碧のシグナル」の第4シリーズ「寺泊で生きていく」は長岡市寺泊地域に密着します。漁師の魅力と苦労とは、人口減少が進む中でどのようにまちづくりを進めていくのか。地域の人たちの思いを通して考えます。(8回続きの6) 

 モクモクと出るカニ汁の湯気、浜焼きの甘じょっぱい香り。3月上旬、久しぶりの晴天に恵まれた「寺泊魚の市場通り」(長岡市寺泊地域)は食べ歩きを楽しむ人々でにぎわった。

 800台が止められる駐車場はほぼ満車に。友人と訪れた新潟市の会社員服部夢蔵(むさし)さん(32)は「海風を感じながら、海鮮を楽しめる。『ザ・新潟』という場所」と笑顔を見せた。

 市場通りに店が出来たのは昭和40年代の後半。浜辺近くに道が整備され、卸売業をしていた角上魚類や山六水産が小売りを始めた。「いい魚が安く買える」と口コミが広がり、日に日に買い物客は増えていった。

 1985年、関越道が全通し、関東地方からも人々が押し寄せた。観光バスを使ったツアーも増えた。

 当時店頭に立っていた山六水産の社長、山口誠太郎さん(62)は「店内は人一人通れないほど。てんやわんやだった」と振り返る。遠方からの客向けに干物や冷凍といった日持ちする商品の売り場を広げた。

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 いま、始まった時の市場通りとは様子ががらりと変わってきた。魚を発泡スチロールに詰めて買って帰る人や観光バスの団体客が減り、食べ歩きに来る個人客が多くなっている。

混雑する魚の市場通り=3月上旬、長岡市の寺泊魚の市場通り

 若者の姿も増え、鮮魚店「市場通り金八」を営む寺泊浜焼センターの社長、難波圭介さん(55)は...

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