
こたつでくつろぐ青木英利さん(右)と真弓さん。子どもが独立し、2人暮らしは3年になった=3月中旬、長岡市寺泊野積
長期企画「碧のシグナル」の第4シリーズ「寺泊で生きていく」は長岡市寺泊地域に密着します。漁師の魅力と苦労とは、人口減少が進む中でどのようにまちづくりを進めていくのか。地域の人たちの思いを通して考えます。(8回続きの2)
特に会話があるわけでもない。でも、どこかゆったりとした時が流れる。
長岡市寺泊野積に古くから立つ広い家。刺し網漁師の青木英利さん(60)は漁に出なかった3月中旬、こたつでパズルの「ナンプレ」を楽しんでいた。妻の真弓さん(58)は針仕事にいそしむ。
2人のなれそめは「今風だと合コン」。漁師の稼業は風や波に影響され、お天道さま任せ。不規則な日々で出会いに恵まれない漁師もいる中で結ばれた。

「最初は漁師じゃなくて、理容師だと思っていた。何度か会うと、話が違うぞと思った」と真弓さんが冗談めかす。おかでは、穏やかな表情の英利さん。漁師歴40年を超えるベテランは、ひとたび船に乗れば厳しい視線で自然と向き合う。真弓さんは「その姿はすてき」といまでも思う。
真弓さんはサラリーマン家庭の長女。婿を取るはずだった。それが漁師に連れ添い、30年余りがたつ。
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英利さんの家は、父の代から漁師だった。
真弓さんが嫁いだころ、当たり前のように義母は網仕事を手伝っていた。「気を使ってくれたのか、手伝わなくていいって言ってくれたのよ」と振り返る。とはいえ、...
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