
魚のさばき方教室を手伝う木村勝一さん(右)。「寺泊で自由に活動ができるのは、父や祖父が漁師として知られていたから」と話す=3月上旬、長岡市寺泊上田町
長期企画「碧のシグナル」の第4シリーズ「寺泊で生きていく」は長岡市寺泊地域に密着します。漁師の魅力と苦労とは、人口減少が進む中でどのようにまちづくりを進めていくのか。地域の人たちの思いを通して考えます。(8回続きの7)
警報級の大雨の後だったが、目の前に広がっていたのは、いままでにない光景だった。長岡市の「寺泊魚の市場通り」。普段の夜なら時折通る車が道を照らすだけだが、この日は違う。人が詰めかけていた。
昨年9月の「ナイトマルシェ」。キッチンカーやお酒を販売する屋台がずらりと並ぶ。午後5時には閉まる店も明かりをともしていた。2度目の開催だったが、前回の約1500人の3倍となる4500人ほどが訪れた。商品の売り切れが相次ぐほどだった。
「地元の若い人もたくさん来てくれた」。市場通りで魚を販売するほか、旅館も経営する寺泊浜焼センター社長の難波圭介さん(55)=寺泊海岸通り魚商組合長=は驚いた。
人口減少や観光の多様化が進む中で、インバウンド(訪日客)誘致など需要の掘り起こしを模索すると難波さん。「市場通りで夕食を食べるといった需要を感じた。新たな景色を見ることができた」と言う。
仕掛けたのは観光とは無縁の一人の若者だった。
■ ■
夏場には仕事に行く前に海で一泳ぎする。「海には力があるんですよ。失恋したら行くでしょ」とざっくばらんな語り口。引き締まった体で、漁師かと思えば職業は介護施設の看護師さん。木村勝一さん(38)だ。
「父に勧められなかった」ことから代は継がなかったが、...
残り1052文字(全文:1705文字)