ライブのタイトルが示す通りの「春の一大事」だった。新発田市の五十公野公園で開かれた「ももいろクローバーZ」の公演には約1万2千人が訪れ、街は時ならぬにぎわいを見せた
▼2日目は強風で中止となったが、ファン(モノノフ)はめげない。メンバーが訪れた「聖地」を巡り、全国の同志と交流を深めた。コラボ商品を買って地域経済に貢献しようと、財布のひもを緩める人も相次いだ
▼ライブが実現したきっかけは、市内に住むモノノフの上野新奈(にな)さん(24)が市長に宛てた「手紙」だった。故郷でライブが見たい-。その熱意が行政を動かした。上野さんは「ライブを地元で見られて幸せでした」と振り返る
▼握手会をしない。自己紹介で実年齢を公表する…。2019年に刊行された「ももクロ非常識ビジネス学」には戦略の一端が紹介されている。業界の「非常識」に挑むことで新境地を切り開いた。その多くは今も引き継がれている
▼地域とのつながりを重視する姿勢も一貫している。本番までにメンバーが次々と新発田入りし、魅力を発信した。「地元の方との交流の架け橋になりたい」。3月に高城(たかぎ)れにさん(31)が語った思いは、他のメンバーも共有している
▼春の一大事は地方都市で開催されている。「推し活」を活性化の起爆剤にと、全国の自治体が熱い視線を注ぐ。昨年の京都府亀岡市ではイベント全体の経済波及効果について、約8億3900万円と推計されている。新発田はいかに。「宴の後」も気にかかる。