少しはキャンパスに慣れた頃だろうか。今年も県内の大学は多くの新入生を迎えた。いくつかの入学式を訪ね、りりしく晴れやかな表情を見せてもらった。そこで気付いたことがある。何人かの学長の式辞に共通するメッセージがあった
▼長岡技術科学大の鎌土重晴学長は、予測困難な現代を指す「VUCA(ブーカ)の時代」を引用した。VUCAとは変動性、不確実性、複雑性、曖昧性を表す英語の頭文字を結んだ造語だ。「未来を創る力、臨機応変に対応できる力を身につけてほしい」と語った
▼新型ウイルス禍や気候変動、戦火がやまぬ国際情勢を例に「社会は予測できない出来事に満ちている」と言ったのは、新潟大の牛木辰男学長である。「答えのない問題に挑戦する勇気と克服する根気を養ってほしい」と呼びかけた
▼三条市立大のアハメド・シャハリアル学長が強調したのも「これまでのやり方が通用しない時代」。学生に求められるのは「過去の知恵に学び、新たな価値観を創造する力」だと奮起を促した
▼世界を翻弄(ほんろう)している大国の大統領を、意識して話したわけでもないはず。従来の原則や定説が通用しづらくなっていることに、多くの人は異論がないだろう
▼心に留めてほしいのは学生に限らない。進学を選択せずに就職した人も、まだ進む道を見いだせない人も、きっと立ち向かうべきものは変わらない。前例や既成概念にとらわれない発想力は、誰かの幸せのために使いたい。力を注ぐべき方向に誤りなきように。