回を重ねるごとに「生徒」の数は増えている。この日は満州から引き揚げてきた男性(88)ら9人が机に向かっていた。外国籍の女性もいた。「この年になって勉強ができてありがたい」。60代の男性の表情には学ぶことの喜びがにじむ
▼ボランティアが勉強を教える自主夜間中学校が新発田市にできて半月がたった。さまざまな事情で義務教育を十分に受けられなかった人らが週に1回、公共施設の一室に集まっている
▼読み書きができない。スーパーのレジで計算にまごつく。日々の暮らしでそんな不便を感じている人に手を差し伸べたい。思いを温めていたメンバーが、全国の先進事例を参考にしながら準備を進めてきた
▼自治体が運営している公立夜間中学とは異なり、卒業資格が得られるわけではない。ただ、通う人は自分のペースで学びたい科目をサポートしてもらえる。一人一人の要望に沿った、きめ細かな支援を受けることができる
▼公立夜間中学の設置は全国で進む。新潟市でも県内初の開校に向けた動きがあるが、実現までには時間がかかる。自主夜間中学の設立に関わった久志田実さん(69)は「できることから始めようと思った」と話す
▼憲法26条は国民が教育を受ける権利を保障する。増加傾向にある外国人にも学びの必要性が高まっている。「学ぶことは、生きること」。自主夜間中学の運営に関わる人からこんな言葉を聞く。新発田での取り組みを通じて、学びを求める人々が「生きる」ための力を得ることを願う。