規模のメリットを追い、今度は県境を越える統合に踏み出した。拡大の成果を地域貢献へとつなげてもらいたい。利用者サービスの向上にも力を尽くしてほしい。

 第四北越銀行を傘下に持つ第四北越フィナンシャルグループ(新潟市中央区)が、群馬県を地盤とする群馬銀行(前橋市)と、経営統合に向けて基本合意した。

 第四北越銀の持ち株会社の社名を変更した上で群馬銀と株式交換を行い、2027年4月1日をめどに統合する。合併は予定せず、両行の本店所在地は変わらない。

 旧第四銀と旧北越銀の合併から4年余りで、さらなる規模拡大を選択した。

 背景には、日銀による利上げの影響がある。金利上昇に伴う収入増が見込めるため、貸し出しの原資となる預金の獲得競争が激しくなっている。

 人口減により顧客が細る一方で、システム更新などに巨額の費用がかかる。企業規模が生き残りの鍵を握るのは間違いない。

 第四北越と群馬の単純合計した連結総資産額は、地方銀行業界3位規模となる。

 この経営基盤の安定は、歓迎されるものだろう。地域金融機関は、地域経済を動かすポンプとして欠かせない存在だからだ。県内トップ銀行である第四北越の責務は極めて重い。

 統合によって増す体力は、県内企業の経営を支え、地域ビジネスの新たな芽を育てる方向へ生かしてもらいたい。

 関東圏にある群馬銀の拠点を足がかりに、本県企業のビジネスチャンスが広がれば、統合メリットを顧客に還元することになる。

 ただしエリアを広げ、首都圏への志向が強まることで、地銀らしさが損なわれないか心配もある。

 大手銀と違い、地域に根ざすことが地銀の本分であることを忘れてはならない。

 生き残りを模索するのは県内の事業所も同じだ。

 トランプ米政権の高関税政策も重なり、経済情勢は不透明さを増している。

 経営の世代交代に悩む中小企業もある。地銀には課題解決に寄り添う姿勢が求められる。

 旧第四銀と旧北越銀の合併は、支店の大規模な統廃合につながった。窓口が遠くなることで不便を感じる利用者がいることは指摘しておきたい。

 年金を受給するために銀行に行かなければならない高齢世代の嘆きも聞こえてくる。

 拡大路線の中、この先も身近な存在であり続けられるかが問われることになる。

 統合交渉で主導権をどちらが握るかは、統合後の姿を占う上で注目される。時価総額で上回る群馬銀に対し、第四北越が交渉で劣勢に回り、新潟の独自性が薄まることは避けねばならない。