もはや血縁や地縁といった従来のつながりだけでは、支えきれない高齢社会である。家族の形が大きく変わる中、新たなセーフティーネットを張り直す必要がある。

 内閣府は自宅で誰にもみとられずに亡くなる「孤立死」をした人が、2024年は推計で2万1856人いたと発表した。

 死後8日以上たって発見されたケースを、生前に社会的に孤立していたと強く推認されるとして「孤立死」とした。自殺も含めた。

 推計は初めてで、警察庁がまとめた自宅で死亡した1人暮らしの人のデータを用いた。

 警察が取り扱った自宅独居死7万6020人のうち、3~4人に1人が1週間以上も発見されなかったという事実に驚かされる。

 孤立死の約7割に当たる1万5630人が65歳以上の高齢者だった。また、約8割は男性だった。

 核家族化や少子化を背景に、独居の高齢者は増え続けている。

 本県も同様の傾向にあり、国立社会保障・人口問題研究所は、20年に12・3%だった独居の高齢者世帯の割合が、50年には20・3%に達すると推計している。

 身近で起き得る課題として、孤立死に向き合う必要がある。

 厚生労働省は、身寄りのない高齢者への支援を拡充する方針だ。

 金銭の管理や福祉サービスの手続き代行の支援、葬儀といった死亡後の事務手続きなどを社会福祉事業とする方向で検討している。

 サービスを通じて見守りを強化し、孤立を防ぐ狙いもある。高齢者と社会をつなぐ支援となることを期待したい。

 現在も入院時の身元保証や死亡後の手続きを担う民間サービスはあるが、高額で、低所得者が利用できないと指摘されていた。

 誰もが安心できる仕組みづくりが大切だ。

 自治体の努力も求められる。

 新発田市は、ふるさと納税の返礼品に、離れて暮らす高齢の親世帯のごみ出しを市社会福祉協議会が支援するサービスを加えた。社協職員が話を聞くなどのサポートも付いている。

 こうした知恵を出し合うことで、孤立防止対策が広がっていくことが望まれる。

 孤立死の3割を占めた65歳以下の世代には、就労支援や居場所づくりなどの対策も有用だろう。

 政府が昨年施行した孤独・孤立対策推進法は、当事者の意向に沿って、孤独・孤立から脱却して生活を円滑に営めるようにするとの目標を掲げる。

 また、法に基づく重点計画は、いつ、誰もが孤立する可能性があり、孤立に陥るのは「個人の責任ではない」と明記する。

 望まない孤立の状況にいながら、助けを求められない人もいる。社会全体で積極的な相談体制を整え、訪問支援などを通じてつながりの再生を支えたい。