消費税の減税論が、にわかに騒がしくなってきた。選挙目当てのポピュリズム(大衆迎合主義)と批判されても仕方がないだろう。
減税は参院選の主要な争点になりそうである。各党には減税と財源をセットにして、持続可能な財政の在り方を示してもらいたい。
立憲民主党の野田佳彦代表は、1年間に限り食料品の消費税率を0%に引き下げる案を参院選公約に盛り込む方針を明らかにした。
野田氏は減税を掲げた理由について、物価高と米政権の関税措置を挙げた。「民のかまどから煙が消える可能性がある」と強調し、食料品の税率0%は経済状況によって1回延長できるとした。
消費税は2024年度、30兆円を超える税収が見込まれている。食料品の税率を0%に引き下げた場合は、年約5兆円の減収になると見積もられる。
24年度の税収のうち、20兆円程度は、国が年金や医療、子育て支援など社会保障に使う。残りの約11兆円は自治体の行政サービスに充てられる。
低所得者ほど収入に占める負担の割合が大きくなる「逆進性」が指摘されているものの、景気動向によって税収が変動しにくい安定した財源である。社会保障制度を支える重要な役割を担っている。
懸念されるのは、減税のための具体的な財源に言及せず、検討を先送りしたことである。野田氏は「赤字国債に頼らず、地方財政や未来世代に負担を及ぼさない」と述べるにとどまった。
減収分の5兆円を確保するのは、容易ではないだろう。確保できなければ、国民へのサービス低下につながりかねない。赤字国債を発行すれば、次の世代に大きな負担を回すことになる。
立民は昨年10月の衆院選で、中低所得者に対して税控除と給付を同時に行う「給付付き税額控除」を公約に掲げていた。
今回の減税は、給付付き税額控除に移行するまでの措置という位置付けだという。それならば、立民には給付付き税額控除の制度の詳細と導入時期も示してほしい。
そもそも立民が消費税率引き下げを参院選の公約に盛り込んだのは、主要な政党が次々に消費税減税を打ち出していることがある。
日本維新の会が2年間の食料品税率0%、国民民主党が時限的な一律5%への引き下げを主張している。公明党の斉藤鉄夫代表は消費税減税も選択肢になり得るとの考えを示した。自民党の参議院議員からも、税率引き下げを求める声が上がっている。
野田氏は財政規律重視が持論だったが、参院選で埋没することを危惧する党内の減税派に押し切られた形となった。
減税することになれば、レジ対応など小売店の煩雑さは相当だろう。そうしたところまで、目配りができているのかも疑問だ。