多くの女性アスリートを力付ける変化だ。世界の注目を集めるスポーツの祭典から、さらに女性の社会参加を後押しする発信がされることを期待したい。

 2028年ロサンゼルス五輪を巡り、国際オリンピック委員会(IOC)は出場枠を決め、女子の割合を50・5%とした。女子が男子を上回る初の大会となる。

 1964年の東京五輪で女子選手の参加率が13・2%だったことを見ると、伸びは鮮明だ。

 目玉はサッカーで、チーム数は女子16、男子12と、初めて女子を多くした。

 IOCは五輪改革の指針に、ジェンダー平等の実現を掲げる。前回2024年のパリ大会では、出場枠が初めて男女同数となった。

 今回は、開催地の米国で女子サッカー人気が高いなどの事情もあるが、改革を進める姿勢を打ち出したといえるだろう。

 競技スポーツの世界は、長く男性中心に発展してきたと指摘される。スポーツの最高の舞台の一つである五輪で女性の参加機会が広がる意義は、社会全体の男女共同参画に向けても大きい。

 IOCのトップにも、大きな変化がある。

 6月に会長に就くのは、競泳女子の五輪金メダリストで、ジンバブエのカースティ・コベントリー理事だ。130年以上のIOCの歴史で初の女性トップとなる。

 委員の女性比率も約40%に増えた。男女が等しく意思決定に携わる状況が形成されつつある。

 パリ五輪では選手村に初めて育児室が設けられた。運営に多様な人材が関わり、より選手が活躍できる環境が整うことが望まれる。

 女性を自認するトランスジェンダー選手の女子競技参加を禁止する大統領令に米トランプ大統領が署名したほか、約1割にとどまる女性の五輪コーチ・監督をいかに育成するかなど、課題は多い。

 アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権は、女性がスポーツをすることさえ禁じている。パリ五輪ではIOCが招待したアフガニスタンの女子選手を、自国代表と認めなかった。

 IOCや各国は女子の参加を認めるよう、粘り強く働きかける役割がある。

 生まれた国や経済状況、宗教で、女性アスリートの活躍の場が奪われてはならない。