その年、初めて聞くカエルの鳴き声を初蛙(はつかわず)という。昨日は暦の上で夏が始まる立夏だった。カエルの繁殖期を迎えた。日が暮れた帰り道、近くの田んぼでも、にぎやかな求愛の合唱が聞こえ始めた

▼子どもの頃、夏休みの自由研究でアマガエルの観察をした。周囲の環境に合わせて、体の色を変えるのが面白かった。カエルを入れたケースに貼る色紙を変えるたび、緑になったり茶色になったり。繰り返すと変色の時間が短くなったことを覚えている

▼天敵から身を守るための変色は、自然界で生き抜くすべである。立場や主張を変える人間にも似たケースがあるだろう。あきれるほどの変わり身があれば、ふむふむと納得できる場合もある

▼野党第1党の立憲民主党が、参院選の公約に食品の消費税率0%を盛り込むことにした。財源は心もとない。野田佳彦代表は本来、財政規律の重視派である。党内をまとめるためとされるが「ひょう変」とやゆされる

▼自民党の石破茂総裁は首相に就任以来「変節」の連続ではなかったか。政権発足後はまず論戦と言っていながら、史上最も早く衆院を解散した。党内基盤の脆弱(ぜいじゃく)さ故だが、選択的夫婦別姓への対応など、総裁選の公約は驚くほど重みがなかった

▼両氏とも、不人気でも必要な政策をこそ重んじた政治家だったはず。カラーを変えるリスクを知らぬわけでもないだろう。胸の内にあるのは打算か苦悩か。党首の立ち居振る舞いを有権者は見ている。連休が終われば再び国会論戦が始まる。

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