再三、ストーカー被害を訴えてきた女性が命を落とすという最悪の結果は防げたのではないか。警察には捜査が適切だったかを検証し、説明することが求められる。
川崎市川崎区の住宅で1日に遺体が見つかり、遺体は市内の20歳の女性と確認された。神奈川県警は女性の元交際相手で、この家に住む27歳の男を死体遺棄容疑で逮捕した。死亡への関与についても調べている。
女性や家族は、昨年12月に女性が行方不明になるまでの半年間、容疑者の男とのトラブルを県警に繰り返し通報していた。
失踪直前には「家の周りをうろついていて怖い」など、計9回にわたって県警に連絡している。
昨年11月には、容疑者が女性の姉宅付近で待ち伏せをし、県警が口頭注意もしていた。
こうした通報を受けながら、県警がストーカー被害の相談を受けていた認識はなかったと主張していることに、違和感を覚える。
ストーカー規制法は、つきまといなどを繰り返し行うことをストーカー行為と定め、犯罪の未然防止を趣旨に掲げている。
しかし県警は、女性に来署を促したが来なかったことなどを挙げ、被害の詳細を確認できず、希望もなかったため、ストーカー規制法に基づく「警告」はしなかったと説明した。
これに対し専門家は、被害者は加害者に脅されるなど、助けを求めにくい場合もあると指摘する。
県警はストーカー事案であることを想定し、女性を訪ねて話を聞くといった対応をすべきだったのではないか。
女性の失踪後の捜査にも課題が見受けられる。
県警は遺体の発見までに計7回、容疑者を任意聴取した。女性が失踪した日に容疑者がつきまとっていたことなどを把握したものの、女性と連絡を取り合っていたと話したため、ストーカーの認定には踏み切らなかった。
結局、ストーカー規制法違反容疑で容疑者の自宅を家宅捜索したのは4月30日で、女性の失踪から4カ月以上たってからだ。
「危険性の認識が甘い」と批判が出るのも当然だ。後手後手の対応と言わざるを得ない。
ストーカーを巡っては、1999年に埼玉県で起きた女子大学生殺害事件が契機となり、翌年ストーカー規制法が成立した。
だが、2023年にも福岡市で規制法に基づく禁止命令を受けていた男が元交際女性を殺害するなど、悲惨な事件は後を絶たない。
本県でも24年に県警が認知したストーカー事案は505件と2年連続で増加し、対策は急務だ。
ストーカー事案は凶悪化しやすいとも指摘される。警察は対応の巧拙が被害者の安全に直結することを肝に銘じ、訴えに向き合わねばならない。