電力業界共通の問題ではなく、東京電力の全社的な問題でもない。柏崎刈羽原発に固有の問題だという。テロ対策など核物質防護体制の不備が柏崎刈羽で相次いだことについて、原子力規制委員会が4月末に示した中間報告には驚かされた

▼核防護に関する会議に責任者が参加していなかったなど、東電の福島第1、第2原発や他社の原発には見られない問題が見つかった。柏崎刈羽だけがずさんな体制だったことが確認されたという

▼新潟県に立地する原発だけが、特異な状況に置かれていたことになる。立地自治体である柏崎市の桜井雅浩市長は「ある意味ショックだ」とコメントした。同じような思いを抱いた県民も多いのではないか

▼柏崎刈羽では過去にはトラブル隠しなどの不祥事もあった。福島第1の事故も経て、県民は多くの葛藤を抱えながら、地元の原発に向き合ってきた。時には厳しい視線も送ってきたはずだ。それなのに、今回の問題は柏崎刈羽だけに見られた事象という。なぜ柏崎刈羽だけなのか。この事態をどう受け止めればいいのか

▼東電と安全協定を結ぶ県にとっても、こうした事態は不本意だろう。今後、柏崎刈羽とどう対峙(たいじ)していくのか。県としての姿勢も問われることになる

▼知事選はきょう告示され、本格的な選挙戦が始まる。新潟県の課題は原発をはじめ多岐にわたる。ただ現下の状況を踏まえれば、私たちが暮らす場所に存在する柏崎刈羽の議論を深めることは欠かせない。実のある論戦を聞きたい。

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