ぶらりと寄った書店で目に留まった。「仕事の超基本」「入社1年目の教科書」「仕事でミスをしない人とミスをする人の習慣」などなど。新社会人向けのコーナーだろうか。手に取る人がどんな表情でページをめくるか想像してみた

▼瞬く間に5月も後半を迎えた。もうバリバリ働く新人もいるだろう。実体験に沿う具体的なアドバイスが欲しくなる頃かもしれない。会社に見切りを付け、次の一歩を踏み出す人が出てくるのもこの時季だ

▼本人に代わって退職の手続きをするサービスが普及しているが、最近は上司代行業なるものもある。上司として期間限定で派遣され、管理職業務の補佐や指導者育成などを担う。管理職への昇進を断る人の増加が背景にあるという

▼パーソル総合研究所の社会人1万人を対象にした調査では「管理職になりたい」人は年々減り、今年は16・7%にとどまった。責任が重いのに報酬が見合わず、業務時間も長くなりがちで割に合わない-。そんな管理職像が忌避されているようだ

▼損か得かを見極め、望む労働スタイルを貫こうとする姿に少し気後れするが、個人や家庭生活が尊重されぬ働き方があるとすれば、そこに目を向けたい

▼“経営の神様”松下幸之助は「立場は新入社員でも意識は社長たれ」との言葉を残した。仕事に張り合いや面白みが増し、人としての成長が促されると説く。「出世できるよう頑張れ」などとは決して言わなかっただろう。胸に留めるべきは、こうした心構えであろうか。

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