誰もが思ったはず。あなたがそれを言っちゃあおしまいよ、と。コメの価格高騰で悲鳴が上がっているまさにその時である。「コメを買ったことがない。家には売るほどある」。農相の江藤拓氏が更迭された

▼あなたがそれを…と耳を疑う大臣は過去にも。東日本大震災について「まだ東北だったから良かった」と言った復興相がいた。政治家の繰り返される失言には、いくつか類型がある

▼ウケ狙いの失敗は多い。道路事業を巡り大物政治家の意をくんだかのように「私は物分かりがいい。すぐ忖度(そんたく)する」と言った国交副大臣は本県選出の人である。東北地方を地盤とする同僚議員のパーティーで、議員を持ち上げ「復興以上に大事(な人)」と口を滑らせたのも大臣だ

▼高慢な本音露呈パターンは大震災の被災地絡みで続いた。「最後は金目でしょ」「知恵を出さないやつは助けない」。温かみのかけらもなかった。責任感の乏しい大臣発言もあった。「法相は死刑のはんこを押す地味な役職」「役所の原稿を朗読する(だけ)」。何正直と言えばいいのか

▼無神経発言もある。女性を「産む機械」と言い放ったのも、原爆投下について「あれで戦争が終わった。しょうがない」と語ったのも現役の閣僚だった

▼かつて、金権問題を抱えた田中角栄元首相を擁護し「政治家に徳目を求めるのは八百屋で魚をくれというのに等しい」と発言した法相がいた。開き直られても困るが、ともかく待ったなしの政治課題が滞ることなきよう願います。

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