常識は変わることもある。先日も本紙に載った記事に教えられた。例えば大地震が起きた際の対処。「安全な体勢を取って!」と言われたらどうするか
▼多くの人は腹ばいでうずくまり、頭を両手で覆うのでは。通称「ダンゴムシのポーズ」だ。しかし、この姿勢では窓ガラスが割れたり、家具が倒れたりといった危険を目で確認しにくい
▼NPO法人「減災教育普及協会」は膝と両手を床につけ顔を上げる「カエルのポーズ」を推奨する。こちらの方が周囲の状況を確認しやすい。「ダンゴムシ」に比べ、激しい揺れの中でも姿勢を安定させやすいという。状況にもよるのだろうが「ダンゴムシ」一辺倒の常識は変わりつつあるのかもしれない
▼傷を負った時の対処もそうだ。かつては消毒し、乾燥させる手法が広まっていた。だが消毒によって、かえって治りが遅くなることもあるという。近頃は水道水で傷口をよく洗うことが推奨されるようになった。湿らせた方が早く治るとして、水分を保つ被覆材で傷口を保護するケースもある
▼米国のトランプ大統領は、よく「常識の革命」という言葉を口にする。自由貿易体制や多様性重視など、常識と考えられてきた価値観を覆す取り組みを意味するらしい。司法を軽視し、民主主義国家では常識の三権分立もどこ吹く風の振る舞いだ
▼新たな知識を得たり経験を重ねたりして、常識が変わることはあり得る。けれど、変えてはならないものもあるはずだ。民主主義はそうだと信じたいのだが。