拍手を送った県民が多いはずだ。第二の故郷、糸魚川市は歓喜に包まれた。
大関大の里が大相撲夏場所を制した。2場所続けての優勝により、場所後の横綱昇進が確実になった。令和の大横綱への歩みを期待したい。
13日目まで無敗で優勝を決めた。「2場所連続優勝か、それに準ずる好成績」とする横綱審議委員会の推薦内規に照らし、申し分のない成績だろう。
驚くのは昇進のスピードだ。2023年5月の初土俵から2年しかたっていない。所要13場所で横綱昇進となれば、年6場所制となった1958年以降初土俵の力士で最速である。
これまで最速だった輪島の21場所を大きく更新する。同じ郷里、石川県出身の輪島は14度優勝し、横綱として一時代を築いた。
初優勝までわずか7場所という史上最速の記録を打ち立てたのも大の里だ。
大関昇進でも羽黒山(新潟市西蒲区出身)、幕下付け出しの初代豊山(新発田市出身)らの昭和以降の最速記録を塗り替えた。
これからも角界を盛り上げる記録を樹立してほしい。
今場所の大の里は盤石だった。先場所敗れた若元春を破り白星発進すると、高安、王鵬ら難敵を次々と退けた。攻め込まれ、ひやっとしたのは11日目の若隆景戦ぐらいではなかったか。
優勝がかかった23日は、先輩大関の琴桜を力強く寄り切った。
綱とりに挑んだ最初の機会を確実にものにした強さからは、重圧に負けぬ精神力がうかがえた。
八角理事長も馬力や前に出る姿勢だけでなく「注目されている中で勝てる」強さを評価する。
大の里は、小学校卒業と同時に本県に移り、糸魚川市の能生中と海洋高で鍛錬した。
今場所に先立ち「今の自分があるのは新潟のおかげ。土台をつくってくれた」と語っていた。
たくましい成長は、後輩たちの手本になる。
郷土力士の奮闘は、能登半島地震で傷ついた石川県にとっての力にもなるものだろう。
出世の速さだけでなく、久しぶりの日本出身横綱になる点も注目を集める。
師匠の二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)が引退した後、約6年間不在だった。その稀勢の里は、貴乃花引退から14年ぶりの日本出身横綱だった。
土俵を席巻するモンゴル勢ら外国出身力士との取組は、国技の熱気を高めそうだ。
相撲界の隆盛に向け、大の里の健闘は欠かせないといえる。
場所前の体重は191キロと幕内最重量を記録した。今後は心技体の一層の充実が求められる。鍛錬を怠ることなく、大の里時代を築いてほしい。
優勝を決めた取組後のインタビューでは、「集中」の成果を強調した。浮ついた様子はない。愛される横綱になりそうだ。
今年は日本相撲協会が誕生して100年である。記念の節目にふさわしい新横綱の活躍を見せてほしい。本県から声援を送りたい。