化学メーカーのクラレが調査する「小学1年生が将来就きたい職業」が今年も公表された。目を引いたのは警察官の人気だ。男子は昨年1位のスポーツ選手を抜きトップとなり、女子も5位に入った。全国4千人の調査のうち、400人超が将来像として警察官を夢見ていた

▼同じく危険業務である消防・レスキュー隊が男子の3位につけた。女子も17位に入る。警察官と消防士はどちらも、20年前の女子の回答では上がってこなかった職種である。ともに危険を伴いつつ、誰かのために働く仕事という点で共通している

▼チョークを製造する川崎市の町工場で社長を務めた大山泰弘さんは、人間の究極の幸せは四つだと著書に書く。人に愛されること、人に褒められること、人の役に立つこと、そして、人に必要とされること

▼大山さんは禅寺の住職から教わったこの四つの幸せは、働くことで実現できると確信していた。それは知的障害のある人を「ちょっとの同情心と成り行き」で雇い始めて気付いたという

▼障害のある社員が懸命に働く姿に、人に褒められ、人の役に立つことの大きな意味を知る。やがて障害のある社員が全社の7割を占めるに至り、工場は「日本でいちばん大切にしたい会社」として取り上げられるようになる

▼どんな仕事も、社会においてそれぞれ大切な役割を果たしている。その中でも、より分かりやすく誰かの役に立てる職業として、子どもたちが将来の夢を温めているのだとしたら、とてもすてきなことだ。

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