中東地域の緊張を極度に高める暴挙だ。イスラエルは攻撃を即刻中止するべきである。イランには軍事衝突の激化を避けるため、冷静な対応を望みたい。
イスラエル軍は13日、イランの首都テヘランや核関連施設など100カ所以上を空爆した。核施設への空爆は初めてだ。
軍幹部や核科学者らが死亡した。攻撃されたウラン濃縮施設内部では、放射能汚染が発生している可能性がある。
イランは報復を宣言し、無人機100機以上を発射して反撃し、イスラエル軍は迎撃している。
イスラエルのネタニヤフ首相は「脅威排除まで作戦は何日も続く」と表明した。イランの最高指導者ハメネイ師は、イスラエルは「厳しい罰を受けなければならない」と徹底抗戦する構えだ。
中東では2023年10月にパレスチナ自治区ガザでイスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘が始まって以降、緊張が続く。緊迫の度は、一気に高まったといえる。
イランはハマスの後ろ盾で、イランの核開発はイスラエルにとって最大の脅威だった。
米国とイランは今年4月以降、核開発を巡り、協議を続けてきた。だが、ウラン濃縮の完全停止を主張する米国側と、濃縮の継続と制裁解除を訴えるイラン側との間で隔たりは大きかった。
両国の合意が見通せなくなったことから、イスラエルは交渉に見切りをつけ、武力によって脅威を排除しようとしたとみられる。
イスラエルとイランの間は距離が離れている。ミサイルが誤って周辺国に着弾した場合、中東全体の緊張が高まる恐れがある。
懸念されるのは、ネタニヤフ氏の強硬姿勢である。
イスラエルでは、ハマスに拘束された人質を解放するため停戦交渉を求める声が高まる。政権維持のためにガザ戦闘を続けているとの不満が広がっている。
一方、イランの核施設攻撃には賛成論が根強い。空爆は、長期化するガザの戦闘から国民の目をそらす狙いが透ける。
米国がイスラエルの愚行を容認したとすれば、看過できない。
トランプ大統領はガザの戦闘について「すぐに終わらせる」と豪語していた。
にもかかわらず、その道筋を示せないばかりか、戦闘は激化し、深刻な人道危機に陥っている。
親イスラエルの姿勢を明らかにしながら、今回の空爆を制止できなかった。両国に対し、あらゆるルートで自制を求めるべきだ。
日本は原油輸入の9割以上を中東に依存している。中東情勢が悪化すれば、エネルギーの安全保障が脅かされかねない。
日本はイランとも長く友好関係を築いてきた。事態がエスカレートしないよう、国際社会と共に両国への働きかけを強めたい。