財政問題となると、よく引き合いに出されるギリシャである。今国会では石破茂首相が「わが国の財政状況はギリシャよりもよろしくない」と述べ、波紋を広げた。借金財政を続ける政府に対し、ギリシャのようになるぞと、警鐘を鳴らす意味では耳にしていたけれど、ついにギリシャより悪くなってしまったのか、と驚いた
▼ギリシャは2009年に財政危機が表面化。15年には事実上のデフォルト(債務不履行)状態となった。失業率は20%台後半まで高まった。預金流出を防ぐために一時、銀行は営業停止した
▼日本はそこまで悪くなっていないというのが実感だ。当然、首相発言には反論が出た。ただ、ギリシャより悪い数値もあり、どの指標で比較するかで評価は変わるようだ。首相は厳しい財政状況から、これ以上借金を増やしてはならないと訴えたかったのだろう
▼ギリシャといえば、約2500年前に直接民主制を敷いた民主主義の大先輩だ。アテネでは男性のみだが、市民集会に参加し政策決定にかかわった。しかし民衆の感情をあおる扇動家により衆愚政治に陥るなどして、衰退の道をたどる
▼参院選が近づいている。財政状況の深刻さを言う首相が、1人当たり一律2万円の給付を公約とする意向を表明したとは、どういうことか
▼どの政党からも有権者には聞こえがよい公約ばかりが聞こえてくる。塩野七生さんは「ギリシア人の物語」に、民主政と衆愚政は銀貨の表裏と書いている。ギリシャに学ぶべきことは多い。