線路上で横付けされた新幹線の間に渡された板の上を乗客が歩き、隣の車両に移っていく。そんな場面が先日、ニュースで流れた。東北新幹線で回送車両として走行中の新型車両が故障し、宇都宮-那須塩原間で停車した。この影響で足止めされた後続車両から、救援車両に乗客が移動したのだ

▼この場面に配信中のネット映画「新幹線大爆破」を思い出した。こちらは走行中の新幹線ではあるが、よく似たシーンがあった。この作品は1975年の同名映画をリメークしたものだ

▼75年の作品は国鉄(当時)の協力が得られずに撮影に苦労したという。速くて安全な「夢の超特急」とうたわれた東海道新幹線の開業からまだ10年ほどの時期だ。国鉄にしてみれば、映画の中とはいえ新幹線が爆破されるなど縁起でもない、ということだったのだろうか

▼安全な乗り物のはずの新幹線が危険なものに変わる意外性が、映画をより面白くしたといえるだろう。作品への評価は高かった。75年の舞台は東海道・山陽新幹線だったが、新作は東北新幹線だ

▼その東北新幹線でトラブルが続いている。昨年9月と今年3月には走行中の新幹線の連結部分が外れた。幸い、けが人はいなかったが、重大事故につながりかねない事案だった。そして冒頭の新型車両の故障では、同様の不具合がほかの新型車両でも相次いで見つかった

▼速さや定時運行など、新幹線の利点は多くある。だが、何よりも重要なのは安全だ。新幹線が危険なのは映画だけで十分だ。

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