一時は中東全体を巻き込み、泥沼化する懸念もあった。事態の収束を歓迎したい。
イスラエルとイランの間には依然として火種が残り、根本的な解決には程遠い。外交交渉を粘り強く続けてほしい。
イスラエルは24日、イランとの停戦合意を表明した。イランも停戦を受け入れた。今後は合意が順守されるよう、強く求めたい。
イランの石油、ガス関連施設や国営テレビ、イスラエルの建物も甚大な被害を受け、多くの死傷者が出た。停戦に合意した後も、両国の攻撃が散発的に続いたが、沈静化した。
停戦が実現したのは、関係国の思惑が一致したためだ。
トランプ米大統領にとって、中東での戦禍に深入りして米兵に被害が及べば、国外での紛争関与に反対する支持層の離反を招く恐れがあった。原油価格の高騰は、米経済を直撃する。
イスラエルは、イランの核開発に打撃を与え、米国の停戦案を受け入れる環境が整っていた。パレスチナ自治区ガザの戦闘では国際社会の非難を浴びており、後ろ盾の米国に配慮する必要があった。
イランは、国の威信を懸けた核施設を攻撃された。しかし、軍事力で大きな差がある米国と全面衝突すれば、最も重要視する体制存続が危ぶまれ、幕引きを図ったとみられる。
ただし、イランが核開発を放棄したわけではない。
イランの核施設の詳細な被害は明らかではなく、施設を再建することも考えられる。攻撃前に核施設から濃縮ウランを運び出したとの情報もある。
今回の攻撃を契機に、イランが秘密裏に核兵器の開発を加速させる危険性も指摘されている。
忘れてならないのは、武力によって、核の脅威を完全に排除するのは困難だということである。
米国とイランは今年4月から核開発を巡る協議を続けてきた。空爆を受けて中断されたが、協議再開の糸口を探るべきだ。
イスラエルとイランが交戦状態に入ったのは13日だった。
イスラエルのネタニヤフ首相はイランの核開発が自国の生存への脅威だと主張し、ウラン濃縮施設などを空爆した。イランは無人機を発射して反撃した。
米国はイスラエルに歩調を合わせて、イランの地下にある核施設を大型の特殊貫通弾(バンカーバスター)を用いて攻撃した。
日本にとって、中東情勢の悪化は原油高を招き、経済活動や国民生活に大きな影響を及ぼす。国際社会と連携し、緊張緩和に向けた努力を尽くさねばならない。
唯一の戦争被爆国として、核兵器の開発に反対するのはもちろんだ。放射性物質による汚染が起こり得る核施設攻撃に対しても警鐘を鳴らしてもらいたい。