「香川県は、うどん県に改名いたします」と人気俳優が宣言する観光キャンペーンの動画があった。調べてみると、14年前のこと。もともと讃岐うどんで有名な地である。県名を変えると言い切り、さらに印象深くなった
▼新潟県は先日「えだまめ県、新潟。」というキャッチコピーを発表した。作付面積は長く全国1位なのに出荷量は後れを取る。2023年は8位だった。挽回を図りたいという思いがにじむ
▼作付面積と出荷量の差については「県民が枝豆好きで自家消費してしまう」と語られてきた。ただ少し引っ込み思案な話ではないだろうか。例えば秋田県は京浜地区の中央卸売市場への出荷に県を挙げて力を入れ、日本一になった年がある。近年も2位を保っている
▼先日の紙面で魚の流通、販売に詳しい糸魚川市出身のながさき一生さんが「ブランド化は一点突破でいくべきだ」と語っていた。枝豆も一緒だろう。県名を変えるかはともかく、集中的な取り組みが大切になる
▼新潟県には先行して「新潟えだまめ盛」とのコピーもある。丼いっぱいに盛り、ビールを片手に家族や友人と味わう光景が浮かぶ。枝豆がたっぷりとあれば、会話がどんなに弾んでも大丈夫だ
▼〈枝豆や最終便にしろと言ふ〉山田弘子。枝豆は素手で食べることができ、手元の歳時記には「人と人との気さくな空間をよく表す」とある。この距離感を楽しむなら、新潟は格好の所になる。ぜひ新潟を訪れたいと思ってもらえるように食文化も発信したい。