もし、米国のトランプ大統領が新潟県知事だったら-。あり得ないことだが、柏崎刈羽原発の再稼働問題を頭に置きながら、そんな夢想を膨らませた
▼国や経済界からの再稼働圧力を逆手に、得意の交渉を繰り広げるだろう。臆面もなく、電源立地交付金や核燃料税の法外な増額を要求し、2週間以内に具体的なプランを示せと、期限を区切りそうだ
▼東京電力には、経営にも口を出したいと、USスチール買収問題で確約させた黄金株の発行を求めかねない。柏崎刈羽は中核発電施設だからと「新潟電力」に社名を変え、社員と家族の多数を本県に移住させろと言い出すかもしれない
▼一方で自らの判断にそれほど時間はかけないだろう。恐らく、トランプ氏なら決して開かないであろう県主催の公聴会が始まった。県は原発再稼働を巡る多様な意見を聞く場だとするが、一般県民がいろんな主張に触れ、考えを深める機会にもなる
▼賛成者はおおむね国のエネルギー政策や温暖化対策などの見地から信念を述べていた。反対者は福祉の現場実感や福島事故を踏まえた生活者目線の訴えが主ではなかったか。人選はバランスをとっており、意見を知事の判断に落とし込む作業はそれほど簡単ではないだろう
▼公聴会のライブ視聴は最大141人だった。配信映像の視聴は丸1日過ぎて約1300回に増えたが、県が注目するのは案外この数字ではないか。公聴会は県内各地であと4回開かれる。単なるガス抜きの場にしてしまってはならない。