復興への取り組みが進む一方で、歯止めがかからぬ人口流出が心配だ。あらゆる世代が故郷で暮らしていけるように、被災地への支援を続ける必要がある。
昨年元日に発生した能登半島地震から1日で1年半となった。
石川県の被災地では、道路をはじめ多くのインフラが地震によって破壊された。昨年9月の豪雨災害でも重ねて被災した。
被害が甚大で時間を要したが、インフラはほぼ復旧し、仮設住宅も完成した。被災建物の公費解体は10月完了を目指している。
被災し、先の見えない思いを抱えてきた人はいるだろう。暮らしの基盤を整え、再建に向けて一歩ずつ前進してもらいたい。
能登半島では各地に仮設商店街が整備され、地震で店舗が全壊した商店などが営業を再開している。農業、漁業も始動している。
なりわいの再建は生活に不可欠なばかりでなく、個人の生きがいにもつながるものだ。以前のような活気を取り戻してほしい。
気がかりなのは、被災地の人口流出が止まらないことだ。
被害が大きい輪島市、珠洲市など6市町全体の人口は、地震が起きた2024年1月時点の推計で11万9650人だったが、25年5月時点では11万625人となり、9千人も減少した。
小中学生は2年前の23年5月に比べて千人以上少なく、輪島、珠洲両市では3割も減ったという。
人口が減れば地域経済は縮小を余儀なくされる。子どもたちの減少は、地域の未来に深刻なダメージとなりかねない。何とか人口流出を食い止めたい。
被災地の人口減少は高齢者の生活にも影響している。
介護施設の職員が大幅に減り、人手不足で入所定員を削減した施設があるという。入所者を県内外に広域避難させたことが人手不足を招いたとも指摘されている。
介護体制が弱体化し、避難先から戻れないままの入所者もいる。遠方への避難や病院移送などの移動が、災害関連死の一因になったことも明らかになった。
過疎高齢化が進む被災地で介護基盤を回復させるには、国や県の支援が欠かせない。今後起こり得る災害も見据え、介護や避難のモデルを構築する必要がある。
本県では、液状化被害が深刻だった新潟市内で公費解体や住宅再建の動きが続いている。
公費解体は市が想定した倍以上の千件を超える申し込みがあり、全県の業者に協力を求めているが、進捗(しんちょく)率は約6割にとどまる。
被害が激しかった地域では、解体後の更地が目立ち、能登半島と同様に人口流出の不安がある。
地域を維持するためにも、安心して暮らせる環境を整えねばならない。行政は地域住民と十分に話し合い、再液状化を防ぐ対策をしっかり講じてもらいたい。