猛暑にあえてフィギュアスケートの話を。浅田真央さんが不世出の選手だったことに、異論のある人はいないだろう。主要な世界大会で優勝を重ね、五輪の銀メダルも手にしている
▼輝かしい戦績には含まれないが、メダルを逃した2014年ソチ五輪の演技こそ深く心に残る。優勝候補だったが、ショートプログラムはミスを連発し、まさかの16位に沈む。勝利の女神は非情だった
▼ところが、翌日のフリーで真価を見せる。高難度のトリプルアクセルを手始めに、6種類の3回転ジャンプをこれでもかと計8回跳んだ。女子史上初となる構成の鬼気迫る滑りは、競技という概念を越えて感動的だった
▼フリーの演技前の秘話がある。絶望の淵にいた浅田さんは「楽しんでやりなよ」と励ました姉の舞さんに、こらえていた感情を爆発させる。「楽しくなんて、できるわけないじゃん」
▼毒を吐き出し、吹っ切れたのだろう。自分の演技を「やるしかない」と気持ちを切り替えた(西沢泰生「トップアスリートたちが教えてくれた胸が熱くなる33の物語と90の名言」)
▼開き直ってやるしかない。今のJ1アルビレックス新潟にも言えまいか。主力級選手が次々去り、大学生チームにも敗れた。新布陣で臨んだ一昨日も負け、監督交代後、リーグ戦は4戦全敗。ついに最下位。さらに故障者。今季はもうダメだとへたり込みそうになるが、諦めたら終わる。プロフェッショナルの意地が見たい。光が見えない苦しい時こそ、支え手も問われる。