本県ゆかりの大の里が横綱に昇進し初めて迎えた大相撲名古屋場所は、連日大入りの盛況だ。その4日目のことだった。立行司の第43代式守伊之助が、阿炎-豊昇龍の一番で軍配差し違えをしてしまい、八角理事長に進退伺を申し出た

▼差し違えぐらいで進退伺とは、大げさではないかと思えたが、立行司には慣例のようだ。行司の最高位である立行司の木村庄之助とナンバー2の伊之助は、腰に短刀を差している。差し違えたら切腹だという覚悟を示すものだと伝わる。間違いが許されない厳しさを改めて知らされた

▼同じころに開催した米大リーグのオールスター戦で、ストライクとボールを機械で判定する「ロボット審判」が初めて導入された。投手や捕手が球審の判定に納得がいかないと申し立て、いくつかの判定が覆された。プロの誇りを持ってジャッジした球審の気持ちはいかばかりか

▼日本が男女ともに1次リーグを突破したバレーボールのネーションズリーグでも、審判の判定に疑義があると、選手や監督が映像での確認を求める場面を何度か目にした

▼スポーツ競技の判定に最新技術が次々と導入されている。2022年サッカー・ワールドカップで有名になった「三笘の1ミリ」が良い例だ。公正な判定が期待できる一方で、審判の心情を思うと切なくなることもある

▼国民の審判である選挙の結果は大敗だったのに、権力の座に居座り続けている人がいる。有権者が下した審判は、決して差し違えではないはずなのだが…。

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