新潟市体育館が、老朽化のため来年4月から当面の間休館することになった。床下の換気用設備に地下水が浸水し、床板に異常が生じる恐れがあるという

▼スポーツで利用したことはあまりないが、成人式の会場が新潟市体育館だった。式典が終わり1月の寒空の下、体育館の前で振り袖姿の友達と談笑した。間近で目にした赤茶色の外壁と急傾斜を描く屋根を鮮明に思い出す。ウン十年前の当時ですら、「レトロだな」と思った

▼新潟市体育館は1巡目新潟国体の4年前、1960年に完成した。曲線が印象的な屋根は馬具の「鞍(くら)」をイメージしているという。近代建築の保存活動に取り組むドコモモ・ジャパンから、2005年度の「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」に選ばれた

▼来春の休館を伝えた本紙報道によると、新潟市体育館は公共施設の再編案の中で廃止も視野に検討されている。市議会では修繕や建て替えの可能性など、休館後の方向性を問う声が上がったという

▼新潟市中心部の信濃川沿いに、陸上競技場とともにたたずむレトロモダンな体育館。古里の原風景として心に刻まれる市民も多いのではないか。時代を伝える建物でもあり、残してほしいなあ、というのが本音ではあるが、存続にかかるコストも無視できないだろう

▼なじみの風景や身近な人々が、ずっと変わらずにいてほしいと願うことがよくある。かなわぬことだと知りながら、65歳になる新潟市体育館の将来を少し切ない気持ちで見守っている。

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