戦闘による死者だけでなく、餓死も相次ぎ、人道危機は悪化の一途をたどる。何としても和平への糸口を探らなければならない。

 パレスチナを国家承認し、イスラエルとの「2国家共存」を目指す動きが広がってきた。

 パレスチナ自治区ガザの人々が直面する殺りくと飢餓は、もはや一刻の猶予も許されない状況にあるからだ。

 先進7カ国(G7)では、フランス、カナダ、条件付きで英国が国家承認の意向を表明した。

 マクロン仏大統領は「中東における永続的な平和」に向けた取り組みと説明した。スターマー英首相は「ガザの悲惨な状況を終わらせる」ことが必要だと強調した。

 ガザでのイスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘は1年10カ月に及ぶ。停戦に向け、イスラエルへ圧力をかけた意義は大きい。

 パレスチナは、ガザ地区やヨルダン川西岸の一部で一定程度の自治を実施しているが、大部分はイスラエルの占領下で、独立した主権国家とは認められていない。

 イスラエルとパレスチナは1993年、自治開始を定めた「オスロ合意」に調印した。国際社会では2国家共存の機運が高まり、約150カ国が承認した。

 しかし、イスラエルのネタニヤフ政権は安全保障上の懸念などから国家承認に反対で、フランス、カナダ、英国を批判した。

 G7では、イスラエルの後ろ盾の米国も否定的だ。ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の加害責任を抱えるドイツは慎重で、イタリアは時期尚早との立場という。

 日本は2国家共存を支持する一方、国家承認は慎重姿勢だ。背景には同盟国、米国の存在があるが、国際情勢を見極めた上で判断してもらいたい。

 7月末に国連本部で開かれた国際会議では、日本を含む120カ国以上の参加国が「2国家共存が唯一の解決策だ」と訴えた。

 この会議にイスラエルと米国は参加しなかった。両国の理解を得られるかどうかが、成否の鍵となるだろう。

 戦闘開始前のガザの人口は222万人ほどだ。ガザ側の死者は7月下旬に6万人を超えた。収容されていない遺体が多数あるとされ、犠牲者は増える恐れがある。負傷者は14万人以上に上る。

 飢餓や栄養失調の死者は150人を超え、90万人以上の子どもが飢えに苦しんでいる。

 イスラエル軍は支援物資を搬入するため、3カ所で戦闘を休止したが、あまりに限定的だ。食料や医薬品不足は深刻だという。

 米イスラエル主導の食料配給拠点の周辺で、イスラエル軍が発砲し、多数が死傷する事態が頻発していることは看過できない。

 国際社会は傍観してはならない。人道危機の抜本的な解決へ、あらゆる方策を講じるべきだ。