「関係人口」という用語を聞く機会が増えてきた。その地に暮らす定住人口でなく、観光客のような交流人口でもない。「観光以上移住未満」と例えられたりする

▼移り住みはしないが、継続的に地域に通う人々を指すらしい。この関係人口を増やそうと政府は言う。それが地方創生になるという。よその人が入り込むのは面白そうではあるが、地方創生の本筋はあくまで移住だろう

▼今こそ移住促進の旗を振るときだ。調査によると、東京23区内の新築マンション1戸当たりの平均価格は1億3千万円に達したという。超高層の上層階の話でなく、全体の平均価格だというから驚くしかない。隣の神奈川県でも1戸7千万円だ

▼建設のための人件費が上がり、円安によって資材費も上がり、資産としての人気も相まって首都圏の相場はどんどん上がってしまった。それを購入できる富裕層がいる一方、多くの人にとって新築マンションは高根の花だ

▼分譲の購入は人々の選択肢から外れ、賃貸に住み続ける人が増える傾向にある。退去しない人が増えると、出回る賃貸物件は限られてくる。少ないパイの奪い合いが、賃貸の家賃上昇を引き起こす。首都圏に住みたい人にとっては、やるせない連鎖だろう

▼マイホームが遠い都会暮らしに見切りを付け、地方移住という選択肢を見いだしてくれないだろうか。本県の不動産相場を東京駅に張りだしてみたくなる。その方が政府の関係人口づくりを待つよりも、地方活性化の早道になる気がする。

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