新発田市民403人の筆でつづられた一冊の本がある。「生きる 戦時下しばた市民の記録」。1982年に刊行され、満州事変から太平洋戦争までの従軍経験や銃後の苦労、終戦後の混乱などが、それぞれの目線で描かれている。歴史学者らが編んだ戦史には書かれていない市井の人々の戦争があった。戦後80年の夏、寄稿者の遺族らを記者が訪ね、「草の根の記憶」をたどった。(4回続きの1)

1937(昭和12)年の盧溝橋事件に端を発する日中戦争が泥沼化し、対米関係にも暗雲が垂れ込めていた39年12月1日。17歳だった菅恒栄門(つねえいもん)さん=新発田市下楠川=は、二王子岳麓近くの集落から陸軍歩兵第16連隊が駐屯する旧新...
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