今年の長岡花火は知人を訪ね、長岡の街並みを見下ろせる高台の公園で眺めた。花火会場からは距離がある。音も遅れて届いたが、夏の風物詩を楽しむには十分だ
▼開いた距離が2キロを超えるというスケールの復興祈念花火「フェニックス」は、市街地を丸ごと、温かな光で包み込むようだった。観覧席で見たときは広大すぎて視界に収められなかったが、離れて見たことで全容がよく分かった
▼長岡花火は打ち上げる玉の数を公表していない。長岡花火財団によると「使われる火薬の量は間違いなく全国一」という。簡単に比べられないが、尺玉を惜しげもなく打ち上げる柏崎市の「海の大花火大会」が約1万6千発というから、2日間、各2時間にわたる長岡花火は相当なものだろう
▼花火の下で輝く街並みを眺め、80年前の夏に思いを巡らせた。長岡の市街地に投下された焼夷(しょうい)弾は、2時間足らずで16万発を超えたという。長岡方面の空が真っ赤に染まって見えたと、市街地から20キロ離れた郡部にいた祖母に聞いた
▼原爆が6日に広島、9日に長崎に投下された前後も、日本各地で多くの空襲があった。新潟市では10日に佐渡汽船のおけさ丸が機銃掃射を受け、客室で多くの人が亡くなるなどした
▼長岡花火の終了後、会場では「感謝の想いを伝えよう」とドローンが夜空に光のメッセージを描いた。海外では戦場で爆撃に使われる無人機が、平和に利用されている日本の幸福を思う。80年に及ぶ非戦の歩みは、決して止めてはならない。