盆踊りがブームだという。東京ではアニメソングに合わせて踊る「アニソン盆踊り」やロックミュージシャンのボン・ジョヴィの曲で踊る「盆ジョヴィ」など独自の進化形が話題になっている

▼隣県の福島市にも新興の盆踊りがある。福島第1原発事故からの復興を願って始まったイベント「フェスティバルFUKUSHIMA!」は、毎年8月に福島駅前通りを会場に行われる

▼音楽は定番の和太鼓でも民謡でもない。参加希望者が思い思いの楽器を持ち寄って生演奏する。曲は「ええじゃないか音頭」などオリジナルのものだ

▼今年初めて参加してみたが、降り続く雨をものともせず、「ええじゃないか、ええじゃないか」のかけ声がつくり出す熱狂の渦にのみ込まれた。昭和の盆踊りの風景というより、音楽の野外フェスを思わせた

▼立ち上げから関わる音楽家の大友良英さんは、始めた理由について「福島の誇りを取り戻すため」と語っている。商店街が衰退する一方、郊外には中央発の商業施設が乱立し、街の個性がどんどん失われている。そこに原発の過酷事故が起きた。「市民の誇りは傷ついてしまった」

▼大友さんが青春時代を過ごした福島市を何とかしようと動き出して14年。手作りの盆踊りは定着し、県外からもファンが集う一大イベントになった。近年の全国的なブームは福島発だと大友さんは胸を張る。自信を失っているのはどこの地方も同じ。ここは「ええじゃないか」と振り切れてみるのも打開の道かもしれない。

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