不透明だった和平への道筋が見え始めた。着実に歩みを進めるため、当事国だけではなく、国際社会も努力するべきである。

 トランプ米大統領はウクライナのゼレンスキー大統領と対面で会談し、ロシアのプーチン大統領とは電話協議した。ゼレンスキー、プーチン両氏の会談に向けて調整を始めた。2週間以内の開催を目指すという。

 会談が実現すれば、ロシアが2022年2月、ウクライナに軍事侵攻して以降、初めてだ。和平に向けた重要な一歩となる。

 ゼレンスキー氏は「この複雑で痛ましい問題を解決するには、首脳会談しかない」と強調したが、ロシア側は首脳会談に応じるかどうか、まだ明言していない。プーチン氏が会談に出席するよう強く求めたい。

 トランプ氏は交流サイト(SNS)で、まずはゼレンスキー氏とプーチン氏の会談を開き、その後に自身を含めた3者会談を実施するとした。和平を確かなものにするために、大国としての役割をしっかり果たしてもらいたい。

 ウクライナは、ロシアが戦闘の終結後、再び侵攻することを警戒し、米欧に対し「安全の保証」を求めている。

 欧州の有志国が戦闘終結後にウクライナに部隊を派遣する案が取り沙汰されている。トランプ氏は、ゼレンスキー氏に対し、安全の保証に関与すると明言した。

 北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長は米メディアに、安全の保証に日本を含む30カ国が関わる方向だと表明した。

 石破茂首相は日本の関与について「法制面、能力面も含めよく検討しながら、しかるべき役割を果たしていく」と述べた。地雷除去やインフラ整備、資金提供などが選択肢とみられる。

 ウクライナはロシアから3年半にわたり侵攻を受け、軍事だけでなく、経済も疲弊している。各国が役割を分担し、支援したい。

 気がかりなのは、ロシアがウクライナ東部ドンバス地域にあるドネツク州と、ルハンスク州の割譲を求めていることである。

 ウクライナ侵攻が、ロシアの武力による一方的な現状変更の試みであるのは明らかだ。割譲は到底認められるものではない。

 先日の米ロ首脳会談では、現状の戦線を踏まえたウクライナとロシアの「領土交換」が議論された経緯がある。

 ゼレンスキー氏が「領土問題は私とプーチン氏の間の問題だ」として、首脳会談で決着させる意向を示したのは当然だ。

 これ以上、戦闘の犠牲者を増やさないため、和平を一刻も早く実現するべきである。

 ウクライナは現在も攻撃にさらされ、大きな被害を受けている。その主張が無視されることがあってはならない。