舞台「WAR BRIDE」が東京・大手町で上演されている。第2次大戦後、日本に駐留した米国の兵士と結婚し、海を渡った「戦争花嫁」の人生を描いた物語だ
▼米兵と一緒に歩いているだけで売春婦といわれた時代。日本でも米国でも偏見にさらされながら、前向きに力強く生きた桂子・ハーンさんを、女優の奈緒さんが演じている
▼その舞台の制作に協力したのは、村上市出身の安冨成良(しげよし)さん(77)だ。戦争花嫁の実情に詳しい嘉悦大学元教授。米国に留学した1970年代に戦争花嫁と知り合い、売春婦や不幸な女性といった見方が誤りであることを知った。偏見を正したいとの思いから研究を続けてきた
▼安冨さんによると、多くは基地の事務員など米軍関係の仕事をしており、そこで結婚相手と知り合った。約170人の戦争花嫁と会ったという安冨さんは「日本人であることを誇りにし、頑張り屋でパワフルな女性が多かった」と語る
▼米国には当時、4万5千人が渡ったとされる。その一人、故スタウト・梅津和子さんは、安冨さんと共同で2005年に出版した「アメリカに渡った戦争花嫁」で、花嫁たちの子、孫、ひ孫は27万人に上ると試算している。20年たった今はさらに増えていることだろう
▼しょうゆなど日本の食べ物や伝統文化を米国に広める役割も果たしたとされる。終戦から80年。あらぬ偏見や人種差別に負けず、米国社会に根を下ろした戦争花嫁の存在と、彼女らが日米友好に果たした功績を忘れたくない。