積年の不満といったところだろうか。「小さいころは、そんなもんかと思っとったが、だんだん年をとってきて、深ーく考えてみると、やっぱし理屈にあわんでしょ」
▼語ったのは、ご長寿姉妹としてテレビによく出ていた「きんさんぎんさん」の妹の方、蟹江ぎんさんだ。「ほんとうは“銀”じゃなくて“金”やったのになあと思うたら、ハハハハ、なんや損したみたいでにゃあ」
▼ぎんさんは10分先に生まれたのに妹だった。昔、双子の場合は先に生まれた方が妹か弟になる慣習があったらしい。でも100歳になる1992年、うれしいことがあった。フィギュアスケートの伊藤みどりさんが五輪で「銀」に輝き「鼻が少ーし高(たこ)うなった」という
▼「姉はきっと、くやしがっとる」と笑わせた。姉妹に話を聞いた作家綾野まさるさんは、このライバル意識が2人の元気印の源だとみた。先日の米女子ゴルフでの岩井明愛(あきえ)さんツアー初優勝の背後にも双子の力があった
▼先に妹の千怜(ちさと)さんがツアー優勝を遂げていた。だから「焦りがあった」と明かす。「いつも心のどこかに千怜がいる」とも語った。それは心強い一方、重圧でもあるのだろう。双子ゆえの悩みがきっとある
▼ぎんさんの姉、成田きんさんは妹にかなわないものがあった。年を重ね、自分は歯がなんにもなくなったのだ。妹が5本残っていることを自慢すると、きんさんも黙っていない。「ネズミみたいだがね。前歯だけよう残った」と混ぜっ返す。楽しそうなライバルだ。