避難に関わるインフラの整備を支えるのは国として当然のことだ。住民の安心につながるかが問われる。原発再稼働の是非と直ちに結び付くものではない。

 政府は29日の原子力関係閣僚会議で、原発立地地域の振興に関する特別措置法(特措法)の対象地域を、原発から半径30キロ圏とする方針を決めた。現行の半径10キロ圏から拡大する。

 本県では現在、東京電力柏崎刈羽原発から半径10キロ圏内の柏崎、刈羽の2市村と隣接する長岡、上越、出雲崎の3市町の計5市町村が対象だが、小千谷、十日町、見附、燕の4市が加わる見通しだ。

 特措法の対象になると、道路などのインフラ整備に対して、国の補助率が最大55%にかさ上げされる。さらに地方債の特例措置を合わせて使うことで、地方の負担は最小13・5%に軽減できる。

 30キロ圏への拡大には、東電福島第1原発事故後に避難計画策定を義務付ける範囲を、従来の原発から半径10キロ圏から30キロ圏に広げた一方、特措法の対象は据え置いたという背景がある。

 新たに計画策定を義務付けられた自治体では、防災対策の負担のみが増した形となっていた。改善を求める声は多く、花角英世知事も今年6月に石破茂首相と面会するなど要望を重ねていた。

 方針を受けて花角氏は「避難の安全確保に資するものだ」と歓迎した。周辺自治体も一定の評価をしたのは当然だろう。避難環境を整備する上で前進といえる。

 柏崎刈羽原発から延びる幹線道路の整備は全額国費で行われるが、特措法の対象拡大により、幹線道路につながる経路の整備も進むことを期待したい。

 気がかりなのは、今回の拡大に、再稼働を前に進めたいという政府の意向がにじむことだ。

 29日の閣僚会議は、政府と東電が再稼働を目指す柏崎刈羽原発も議題とした。石破氏は「全力で対応を」と閣僚らに指示した。

 政府は今年2月に閣議決定したエネルギー基本計画で、2040年度の電源構成に占める原発比率を2割程度にすると記すなど、原発回帰を鮮明にしている。

 だが、福島事故を経て、原発事故や事故に伴う避難に関し、強い不安を抱く国民がいることを忘れてはならない。

 冬場は積雪もある本県ではさらに、避難への不安が募る。特措法の対象拡大だけでなく、避難訓練などを重ねる必要がある。能登半島地震を教訓に、道路寸断にも備えなければならないだろう。

 花角氏は、特措法の対象拡大方針が再稼働の是非を巡る自身の判断に影響するかを問われ「申し上げようがない」と言及を避けた。

 県が県民の意見を聞く公聴会は月末まで続いている。政府は県をせかすことなく、地元の判断を静かに見守るべきだ。