脱炭素化の柱に位置付けられる重要な再生可能エネルギーだ。厳しい環境下にはあるが、着実に導入が進むよう、政府は改めて戦略を練ってもらいたい。

 洋上風力発電事業を巡り、三菱商事は、秋田、千葉両県沖の3海域で進めてきた発電所の建設計画から撤退すると発表した。

 資材価格の高騰などで、建設費用が4年前の入札時の見込みから2倍以上に膨らみ、採算が合わなくなったことが大きな要因だ。

 中部電力子会社などと企業連合を組んで臨んだ大型プロジェクトだったが、計画倒れに終わった。

 三菱商事連合は、2021年12月に国内初の大規模洋上風力として、国が公募したこの3案件を総取りで落札した。

 地元は地域経済の活性化につながるとみていたが、期待を裏切る結果となり、残念だ。

 三菱商事の中西勝也社長は記者会見で「総収入よりも総支出が上回る。損益がマイナスとなる事業を続けるという選択を取れなかった」と説明した。

 ただ、三菱商事連合が示した格安の売電価格に対して、採算割れを危ぶむ声が絶えなかったことは見逃せない。

 発電規模が最大だった秋田の案件では、1キロワット時当たり約12円という競合よりも圧倒的に安い水準を示し、他の事業者を驚かせた。

 懸念が現実になったことには、計画に甘さがあったと指摘されても仕方がない。

 国内初の大規模計画を落札した三菱商事連合の撤退で、洋上風力導入に向けた機運がしぼまないか、気がかりだ。

 政府は今年2月に閣議決定したエネルギー基本計画で、再エネを40年度の電源構成で4~5割程度に引き上げる目標を掲げた。

 風力発電で全体の4~8%程度を賄う構想だ。30年までに1千万キロワット、40年までに3千万~4500万キロワットを導入目標としている。

 今回の案件については、再公募で出直しを図る構えだが、ハードルは高いと言わざるを得ない。コスト増に苦しんでいるのは他の事業者も同じだからだ。

 経済産業省と国土交通省は、洋上風力発電による海域の使用期間の延長を可能とすることで、事業者が収益を確保しやすくすることなどを検討しているという。

 村上市と胎内市の沖合で、三井物産などによる特別目的会社が29年の稼働を目指して進めている事業をはじめ、全国の事業がしっかりと軌道に乗るように、さらに知恵を出していかねばならない。

 洋上風力の設備は海外からの調達比率が高く、世界市況や為替変動に左右されやすい。

 トランプ米政権が洋上風力の開発制限を指示するなど、事業展開には逆風が吹いている。リスクを軽減するには、設備の国産化にも注力する必要がある。