石破茂首相の辞意表明に至る経緯をどう評価するかは、立場によって変わるだろう。保守勢力が安倍晋三元首相と比較して個人的資質をうんぬんし、罵詈雑言まがいの批判をする一方で、参院選の大敗後にもかかわらず続投を求めるデモが行われた。世論調査で内閣支持率が原因不明の回復を見せ、自信を持った首相が政権を引き延ばしたとも言われる。

 どれも一定の説得力はあるのかもしれない。だが、いずれも石破政権を「政局」、すなわち自民党内の政治力学や国民の一喜一憂の観点から見たに過ぎない。石破政権は国家像として「楽しい日本」を理念とし「地方創生2・0」「防災庁設置」を掲げたが、道半ばにも達せず瓦解することになった。

 眼前の...

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