きょう1日は衣替え、気象記念日でもある。1875年、東京気象台が観測を始めた日だ。9年後の同日、午前6時に初めて天気予報が発表された。「全国一般風ノ向キハ定(さだま)リナシ天気ハ変リ易(やす)シ但(ただ)シ雨天勝チ」
▼天候は変わりやすく雨も降るかも。こんな曖昧な表現では、どんな服を着たらいいのか。予報は派出所に張り出されたというが、衣替え当日、明治の人々を悩ませたことだろう
▼今年の3カ月予報では、新潟を含む北陸地方は気温が高めのよう。当初は低温も心配され、湿気も気になる。すでにクールビズに移っている職場もあるはずだ。ノージャケットにノーネクタイは定番。では3年目になるマスクの衣替えはどうか
▼通販サイトをのぞくと、業者が夏用マスクでアイデアを競っている。冷感、蒸れない、息がしやすいは当たり前。日焼け防止に蚊が来ない防虫加工、ファン付きまで。年々マスクも進化する。夏を前に政府はマスク着用方針を見直した。屋内でも周囲との距離が十分で、会話もほとんどなければ、着用なしでOKとした
▼炎暑の中、マスクを適切に外すことは、熱中症予防の勘所だ。だが、マスク生活が当たり前になり、素顔を見せることが恥ずかしい。外した時の周囲の視線が怖い。そんなマスク依存の若者たちが増えたと心配する精神科医もいる
▼自然の寒暖を肌身で感じて、四季の移ろいを慈しむ。衣替えは誇るべき伝統だ。さて口元はどうなるか。今年の夏は見た目より、心の衣替えも大切にしたい。