
久保田泉・国立環境研究所主幹研究員
国際司法裁判所(ICJ)は7月、国際法上、全ての国家には気候変動対策をとる義務があるとする極めて重要な勧告的意見を公表した。この意見は、気候変動に関する不正義の是正を求める長年の戦いにおける一つの到達点であると同時に、法の支配に基づく新たな気候変動対策の時代の幕開けを意味する。
意見の核心は、義務の根拠をパリ協定のような気候変動関連条約に限定しなかった点にある。ICJは、慣習国際法、国連海洋法条約、国際人権法など、複数の国際法から生じると結論づけた。
特に慣習国際法上の、環境に対する重大な損害の防止原則と「相当の注意」義務が、温室効果ガス排出にも適用されるとしたことは重要だ。
ある国の活動が...
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