フランス料理になじみがなくても、この著者の名前は聞いたことがある。アラン・デュカスは、世界中で30店以上のレストランを経営し、6月現在、ミシュランガイドの星を計17個獲得しているという、フランス料理界の巨匠だ。

 本書は自らの料理哲学や、料理人としての歩みを赤裸々につづった自伝的なエッセー。音やにおいも伝わってくるような、五感に訴える料理の描写は、さすが料理人だ。

 幼い頃、祖母が作ってくれた料理の思い出から、修業時代に師事した4人の有名料理人、菓子職人との出会い、第二の故郷という地中海沿岸地域との結び付きを、情感を込めて語りつつ、郷愁に浸るのではなく、常に前を向き、成長することが大事だと説く。...

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