戦火を収めることができず、機能不全が言われて久しい。だからといって、米国は背を向けるのではなく、各国と協調して国連が本来の役割を果たせるように力を尽くすべきだ。

 国連総会一般討論が行われ、トランプ米大統領や石破茂首相ら各国首脳が演説した。

 今年は国連創設80年の節目となる。第2次大戦後の国際秩序を支えてきたが、現状は多くの問題を抱えている。

 ロシアによるウクライナ侵攻や、パレスチナ自治区ガザでのイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が長期化し、多くの尊い命が失われ続けている。

 国連が最大の任務である世界の平和と安全の維持を果たせないでいることは、悲しい限りだ。

 トランプ氏は、こうした事態を批判し、任務達成への期待に「全く応えていない」と切り捨てた。

 さらに、地球温暖化は起きていないとし、国連の気候変動対策は「史上最大の詐欺だ」と述べた。国連が不法移民を助長しているなどの持論を展開した。

 国連創設を主導した米国自身が、国連の役割に疑問を呈したことは、残念でならない。米国第一主義を掲げるトランプ氏が、多国間主義と決別する姿勢を鮮明にしたといえる。

 自国中心主義がまかり通っている状況も憂慮される。

 米国だけでなく、主要な加盟国が国際協調に向き合わねば、国連はその期待に応えられるはずがないだろう。

 国際平和への責任を負う安全保障理事会の常任理事国であるロシアが、侵攻を続けていることも断じて許されない。

 石破首相は演説で「安保理は十分に機能を発揮できていない。その最たる例がロシアによるウクライナ侵略だ」とし、常任、非常任理事国の拡大が必要だと訴えた。

 首相が「分断より連帯、対立より寛容を」と求めたことは、大いにうなずける。

 グテレス事務総長は一般討論演説を前に、国連の原点を振り返り「多国間協調を主導する強力な機関がなければ、多極化にはリスクが伴う」と警鐘を鳴らした。

 協調して、世界の課題解決に当たることができるように、各国は国連の重要性を改めて認識してもらいたい。

 国連財政が火の車になっていることも懸念される。

 分担金の22%を負担する最大の拠出国である米国が、拠出金の削減や凍結をしているためだ。

 約4万4千人いる職員の削減や重複する組織の統廃合を国連は進めている。効率的な体制を構築してもらいたい。

 国連が力を発揮でき、世界に平和を取り戻すための改革議論が急がれる。米国は各国を先導する役割が求められるはずだ。