横綱として本来の力を十分に発揮し、見事に賜杯を手にしたことを、多くの県民とともに喜び、たたえたい。この優勝が令和の大横綱への一歩となるよう、さらなる精進を期待する。
大相撲秋場所千秋楽で、横綱大の里は、13勝2敗で並んだ横綱豊昇龍を優勝決定戦で破り、2場所ぶり5度目の優勝を果たした。横綱としては昇進2場所目での初制覇となった。
今場所は、悪い癖である引き技を封印し、大きな体格を生かした馬力のある攻めで相手を圧倒する取り口が光った。攻め込まれても我慢して逆襲に転じた。
先場所とは比較にならないほど安定していた。新横綱となった先場所は、重圧があったのだろう。金星4個を許したが、今場所は一つにとどめた。
豊昇龍との本割は、大の里本人が言うように「最悪の相撲」で、あっけなく敗れた。しかし、優勝決定戦で精神的に立ち直り勝負に集中したのは、横綱らしい心技体が備わったといえよう。
大の里は、平幕に賜杯を奪われた先場所の苦しい経験は2度としたくないと思い、稽古に励んできたとしている。
試練を乗り越えつかんだ栄冠だけに、喜びもひとしおだろう。
一夜明けた29日の記者会見で「今までの優勝とひと味違う感じがある」と語った。
角界最高位の責任を全うしたことへの安堵(あんど)感もあるはずだ。
横綱の優勝は、昨年7月の名古屋場所の照ノ富士以来となる。1年以上も横綱が優勝できない場所が続いた。
横綱同士の優勝決定戦は、2009年秋場所以来16年ぶりだ。最高峰の2人が優勝をかけた闘いは、見応えがあった。番付の重みも感じられた。
小結安青錦ら若手の台頭も注目されるが、豊昇龍と切磋琢磨(せっさたくま)しながら今後も角界を盛り上げ、引っ張っていってほしい。
大の里は今年60勝を挙げ、来場所を待たずに年間最多勝が確定した。横綱が年間最多勝に輝くのは、21年の照ノ富士以来だ。
また、日本出身力士の年間3度の優勝は、1997年の横綱貴乃花以来となる快挙でもある。貴乃花は大の里の憧れの存在で、「平成の大横綱」と言われた。
大の里の今後の成長が楽しみだ。国民から愛され、一時代を築く大横綱への道を進んでほしい。