一段と家計負担が重くなる。暮らしのゆとりがなくならないか心配だ。自民党総裁選でしのぎを削る5候補には、生活不安をどう払拭するか、実効性ある対策について議論を深めてもらいたい。
帝国データバンクは、10月に値上げ予定の食品が3024品目になるとの調査結果を発表した。
4月の4225品目以来、半年ぶりに3千品目を超える。電気・ガス料金の政府補助も終わる。
一方で、10月からは最低賃金も各地で順次引き上げられる。2025年度の改定により、全都道府県で初めて時給が千円を超え、本県は1050円となる。
給料が上がれば、生活には余裕が生まれるはずだ。しかし賃上げをしのぐ勢いで物価上昇が続き、暮らしが楽になる気配はない。
内閣府が9月に公表した国民生活に関する世論調査の速報値では、食生活に「満足している」「まあ満足している」との回答が計61・6%だった。同様の質問がある08年以降、最低水準となる見通しだという。
食料品をはじめとする物価高が影響した可能性があるだろう。
国民生活をいかに支えるか、現下の総裁選で次期首相を目指す各候補の主張に注目したい。
物価高対策を巡っては、多くの候補がガソリン税の暫定税率廃止や、所得税を下げる効果がある基礎控除の引き上げに言及しているものの、いずれも既に議論されている政策で新味はない。
高市早苗前経済安全保障担当相は、自民、公明、立憲民主の3党が協議している給付と所得税の減税を組み合わせた「給付付き税額控除」に積極姿勢だ。
中・低所得者の負担軽減策の一つだが、所得や資産の把握が必要で、導入には時間を要する。
小林鷹之元経済安保相は所得税を一定の割合で減税する「定率減税」を時限復活し、現役世代が使えるお金を増やすとする。
ただ、所得税の定率減税は高所得者の優遇につながりやすい。低所得者の支援策が不可欠だ。
賃上げでは、茂木敏充前幹事長が3年で平均年収を50万円引き上げると掲げ、小泉進次郎農相も30年度までに100万円増やすと訴えている。どちらも毎年20万円近くの引き上げをどう図るのか。
林芳正官房長官は、実質賃金の年1%上昇を定着させると主張している。現状は、物価変動を考慮した実質賃金が7月の確報値で7カ月連続マイナスだ。上昇に転じさせる手法を語ってほしい。
10月からは、一定以上の所得がある75歳以上の外来医療費の窓口負担も上がる。3年前に、負担緩和のために設けられた配慮措置が9月末で終わるためだ。
各候補は、負担増に苦しんでいる国民の生活をしっかりと見据え、即効性のある対策についても知恵を絞ってもらいたい。