石破茂首相と新潟の間には、妻佳子さんの父親が本県出身という縁がある。田中角栄最後の弟子を自認する石破首相は独身の頃、花嫁を世話しようとする角栄氏に、結婚したい女性がいると佳子さんのことを伝えた
▼佳子さんは丸紅社員だった。ロッキード事件の渦中にあった商社だ。角栄氏は「ばか者」と怒ったが、新潟にルーツがあると聞くや「そうか、それならいい」。披露宴では既に他界していた父親代わりを務めた(石破茂「保守政治家」)
▼角栄氏は「総理大臣は努力してなれるものではない。天命だ」と語ったという。総裁選で負け続けていた首相は、自分が総理になるとすれば自民党が立ち行かなくなった時だと口にしていた。その通りに「天命」が下ったともいえるが、救世主にはなり損ねそうだ
▼今日で就任1年になる。在職日数で麻生太郎氏は上回るものの、追い立てられて間もなく退任する。「辞めるな」とデモ行進されつつ短命政権となった宰相として記憶されるだろうか
▼9月の国連演説では、終戦記念日などでもそうだったように「石破らしさ」をちりばめて語るべきを語った。ただ、言葉に力はあっても、この1年の政策遂行を振り返れば「言うは易(やす)し」に帰結する
▼足かせになった野党対策や党内融和について、退陣表明時に「どうしたらよかったのかな」と漏らした姿には悲哀が漂った。いっそ国民の方だけを向き、ひたすら信念のままに猛進していたら、別の道もあったのか。想像しても詮ないけれど。