高齢の女性がコンビニで支払いをしようとするが手元がおぼつかない。レジ待ちの列は延び、焦りが募る…。少し前に流れた公共CMに、80歳代の親の姿が重なった。増える一方のセルフレジにはなじめない。他のお客を待たせるのは嫌だと、混む店を避けるようになった
▼とはいえ、暮らしに買い物は欠かせない。どうすればいいかと悩む人が少なからずいるのだろう。新潟市で先月、高齢者の買い物支援が始まったと本紙生活面が報じた。英国発の「スローショッピング」という取り組みだ
▼新潟市のケースではボランティア団体と移動サービス事業者、スーパーが手を組んだ。安価な相乗りタクシーで送迎し、店内ではボランティアが付き添い、店はゆっくり会計ができるレジを設ける。買い物後はおしゃべりを楽しむ
▼初回は3人が利用した。最年長の85歳の女性は足が不自由で、家から出るにも時間がかかる。だがこの日は30分ほど店内を歩いた。帰宅後は買った豚肉で角煮をつくり、疲れを心配していた周囲を驚かせた
▼県内では2050年に、5世帯に1世帯が1人暮らしの高齢者になるという推計がある。買い物を支える仕組みはより重要になるだろう。関係者は孤立を防ぐ効果も期待し、毎月3回程度実施するという。すでに今月の予約も入っている
▼仕組みとともに寛容さも持っていたい。冒頭のCMでは、女性の後ろにいた男性が歌いだす。「あんたのペースでいいんだぜ」。この気持ちで解決できることもきっとある。