国が最も重要と位置づける統計調査で、さまざまな政策づくりや経済活動に欠かせない資料である。正確なデータが把握できるよう、積極的に回答したい。

 5年に1度の国勢調査が行われている。外国人を含めた日本に住む全ての人が対象で、10月1日を基準日として、世帯構成や国籍、就業状況などを調べる。

 既に調査員が調査票を配布しており、各世帯はインターネットや郵送、または調査員に手渡しする形で8日までに提出する。

 得られたデータは、多岐にわたって利用される。

 行政では衆議院の小選挙区の改定や、子育て支援施策や避難所設置の検討に用いられるほか、将来人口など公的な推計にも使われる。電力の需要把握といった民間での活用もある。

 その大本となるデータの精度が高ければ、施策もより実態に即したものになると期待される。

 調査に協力し、回答を積み上げることでデータを強化したい。

 課題となっているのが、調査票を回収できない例が次第に増えていることだ。

 国勢調査は全世帯からの回答を目指すため、回収ができなかった世帯については近隣の人などから情報を聞き取る。

 総務省の資料では、前回調査が行われた2020年の「聞き取り」の割合は16・3%と、10年前と比べほぼ倍増した。調査員の負担が増していることが想像される。

 こうした状況や、戸別訪問への警戒感が高まっていることを背景に、全国的に調査員のなり手不足が深刻化している。

 県内でも、頼める人がいないとして自治会役員が自ら担ったり、派遣会社を通じて人を募ったりと、確保に苦慮する例が多い。

 国勢調査の継続性に関わる重大な問題だ。

 国は今回、原則、調査員が訪問して配布してきた調査票について、試験的に東京都などの一部世帯で郵送とした。戸別訪問が難しいオートロック付きのマンションに対応するためという。

 また、回収の負担軽減などを考慮し、全回答に占めるネット回答の割合を前回の37・9%から、今回は50%に引き上げるという目標を掲げている。

 専門家は、持続的な調査とするために「ネット回答に軸足を移すべきだ」と指摘する。

 高齢者のネット回答を支援するなど、調査員、回答者双方の負担を低減する工夫を国が講じていく必要があるだろう。

 県内では、国勢調査に関連する不審メールが報告されている。県によると、未回答の罰則を強調した内容で、回答用の偽のウェブアドレスが表記されている。

 重要な調査に乗じた許されない行為だ。だまされることがないように注意したい。