地域住民が不安にならぬよう水源地を守るルール作りを進める必要がある。だが、外国人敵視につながってはならない。慎重な運用を求めたい。

 国土交通省は、一定規模以上の土地を取引した場合、取得者の住所などだけでなく、国籍も自治体に届け出るよう義務付けたと明らかにした。

 7月1日付で国土利用計画法の施行規則を改正し、報告事項に国籍を追加した。

 「市街化区域」では2千平方メートル以上、「都市計画区域外」では1万平方メートル以上の土地を購入した場合に報告対象となる。

 どのような取引があるのか、実態を把握することが狙いだという。国や自治体が一元的に土地の取引状況を把握できるようシステムを整備する。

 外国資本による森林買収で水源地が損なわれるといった懸念を受けての対応だという。

 森林は水を蓄え、土砂の流出を防ぐなど国土保全に大きな役割を担う。水資源が暮らしの根幹にあることは言うまでもなく、適切な保全が欠かせない。

 水源地を巡っては県内でも、津南町が売却方針を決めたリゾート施設の敷地内に上水道や農業用水の水源地があることから8、9月に町民説明会が開かれている。

 妙高市では、外資系による大規模リゾート開発計画を受け、土地建物の取引が活発化していることから、乱開発を防ぐため、開発規制を強化するための条例が9月に成立した。

 どういった人物がどう土地を使うのか。周辺住民が心配せずに済むよう透明性を確保する仕組みがあってしかるべきだ。

 求められるのは、土地売買がグローバル化したこの時代に合わせた規制の在り方の議論だろう。

 自衛隊基地や原発など安全保障上重要な施設の周辺であれば、外国資本による取得への懸念から、2022年に土地利用規制法が全面施行されている。

 規制区域に指定されると政府が土地所有者の国籍などを調べ、施設機能への妨害には中止勧告、命令を出すことができる。全国で585カ所が指定されている。

 23年からは農地の取得者にも国籍報告が義務付けられた。

 懸念されるのは、こうした国籍の報告義務化や規制の拡大が、排外主義につながることだ。

 外国人や外国資本による不動産取得については、自民党総裁選の所見発表演説会でも複数の候補が規制強化などを主張した。考えるべきは共生への道である。

 少子高齢化の進展に伴い、担い手がいない土地が増えていくことが考えられる。

 適正な土地利用に向け安全保障や環境保全を意識する一方、経済活動の自由があることも忘れずに法整備を進めるべきである。