勝利が決まっても、こわばった表情を崩さなかったのは、決意をたぎらせていたからか。「ワークライフバランスという言葉は捨てます。働いて働いて働いて働いて、働いてまいります」。自民党新総裁としてのあいさつは、高市早苗さんらしいものだった

▼「歴代最年少」を退け、高市さんが女性の躍進を阻む「ガラスの天井」をぶち破った形となった。女性活躍という側面より、タカ派で勇ましい政治信条にこそ支持を集める強みがあったようだ

▼選挙戦を通じて、挙党一致の象徴として谷垣禎一さんの名前が何度も取り沙汰されていた。2009年の政権交代で下野した時の自民党総裁である

▼当時の自民党は国民の信頼を失って消沈し、離党者が相次いだ。火中の栗を拾って先頭に立ち「みんなでやろうぜ」と結束を呼びかけたのが谷垣さんだった。あの頃に立ち返ろうという意図がうかがえた

▼谷垣さんが力を入れたのが、少人数で各地の住民と膝を突き合わせ「草の根の声」に耳を傾ける対話集会だった。今見習うべきは内向きな組織固め以上に、こうした地道な取り組みなのだろう

▼高市さんが今回の決選投票を制したのは、本県を含め全国の党員の意向が尊重された結果だ。今後も「責任政党」を標榜(ひょうぼう)するのなら、くみ取るのは支援者らの声だけでなく、ましてネットやSNSにあふれる書き込みだけでもないはずだ。新体制の下で自民党は来月、立党70年の節目を迎える。その時に、政治の風景に変化の兆しは見えているか。